» くれふし山の蛇「常陸国風土記 -那賀の郡」

日本神話

日本神話

日本各国の風土記やアイヌ神話、
神社の社伝など古事記や日本書紀では
語られていない日本神話
御紹介致します。

くれふし山の蛇「常陸国風土記 -那賀の郡」

  • 登場人物
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
5/5 (1)

 茨城の里の北のほうには高い丘がありました。その丘の名前をくれふし山といいます。
とあるおじいさんがいうことには、その里にヌカビコとヌカヒメという兄妹が暮らしていました。
あるとき、妹が部屋にいると、現れた一人の男がいました。男の名前はわかりませんでしたが、その男は夜ごとにヌカヒメに会いに来て、昼には帰っていきました。

 ついに、ヌカヒメはその男と結婚し、一晩で身ごもりました。
臨月になると、ヌカヒメはなんと小さな蛇を産みました。
その子は、明るいうちは口がきけませんでしたが、暗くなるとお母さんのヌカヒメとお話ができるようになります。
母と、伯父にあたるヌカビコは驚き、そして不思議に思い、「この子は神の子なのだろう」と密かに考えるようになりました。
そこで、きれいな杯の上に小蛇を乗せ、さらに、祭壇を設けました。
すると、蛇は一晩のうちに杯の中でぎゅうぎゅうになるほど成長しました。
次に、平たい皿に乗せておくと、今度はまた皿の中でぎゅうぎゅうになるほど大きくなってしまいました。

 このようなことが、3たび、4たび起こり、ついには蛇を入れてやる器がなくなってしまいました。
母であるヌカヒメが子供の蛇に
「お前の器量を見て、自然とお前が神の子であることが分かりました。わたしたちの力ではとてもお前を育ててやることができません。おまえはお父さんがいるところにいきなさい。ここにいてはいけません。」
と言いました。
蛇は、泣いて悲しみ、涙でぬれた頬をぬぐいながら
「謹んで母上のお言葉をうけたまわりましょう。しかし、この世界で身一つであるわたしがたった独りで行くとなりますと、共に行き道中助けてくれる者がありません。どうか、私をあわれに思って、子供をひとり、私に付き添わせてください。」
と答えました。
しかし、母は
「この家にいるのは、私と兄だけです。そのことをお前はよく知っているはずです。お前に付き添わせてあげられる者はいません。」と言いました。
母の言葉を聞いて、蛇は母を恨めしく思い、そして一言も言いませんでした。

kurefusiyamanohebi

 いよいよ別れのとき。
怒りに耐えられなくなった蛇は伯父であるヌカビコを雷の力で殺し、そして天に昇って行こうとしました。
しかし、その時びっくりした母が、盆を取って子供の蛇に投げつけました。
その盆が当たり、蛇は天に昇ることができなくなってしまいました。
そのために、蛇はこの峰 ―茨城の里の北のほうにある、くれふし山― に留まることとなりました。

この蛇を乗せた皿と甕は今も片岡の村にあって、その子孫が社を立てて代々祭りをしているようです。


お話の評価

ページトップ