» しっぺい太郎(泣き祭)

中世の物語

中世の物語

平安時代の雅から一変武士の社会へと
変わった時代。妖怪のお話や武士や
城主のお話までご紹介しております。

しっぺい太郎(泣き祭)

  • 登場人物
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
5/5 (3)

昔、行念という僧侶がおりました。
元々行念は、剣の達つ武士でありましたが戦で仕えていた家が滅亡して僧侶となったのでした。

主人や仲間たちの無念を弔うべくあてのない放浪の旅をし、ある日駿河国の見附村に行き着きました。

稲穂を刈り上げた後の香ばしい香りが村中を包み込みあちらでは餅をつき、こちらでは稲を飾り付けています。
どうやら、今日は村の秋祭りのようです。

行念は餅を一つ貰い食べながら村を歩いて回ります。
すると、1軒だけ周りの家とは違い活気のない家がありました。

不思議に思った行念はその家を尋ねることにしました。
すると、若い娘を中心に老いた夫婦が泣き崩れているではありませんか。

行念は優しい声で夫に話しかけました。
「どういたされた?私は行念と申す雲水。お役に立てることがあるやもしれませぬ」

すると、夫は涙を殺して話しだしました。
「我が子を・・・娘を今夜、人身御供に差し出さねばならぬのです」

行念は身を乗り出して言いました。
「人身御供を差し出すと申されたか?」

すると、老夫婦は再び泣き崩れました。

行念は夫婦を慰めながら事の経緯を聞きました。
この見附村の秋祭りは泣き祭と呼ばれており毎年、娘のいる家の門にどこからか白羽の矢が立てられます。

白羽の矢がたった家は見付天神に娘を人身御供として捧げなければならにのです。
もし、捧げなければ田畑は荒らされ不作が続くとのことでした。

娘は涙をこらえてはいましたがその悲しみと辛さは行念に伝わりました。

「このような酷い仕打ちをする神がいようとは・・・その姿を見届けてやる」
そういうと行念は見付天神に向かいました。

見付天神に着くとお堂の中をくまなく探りました。
お堂の中には、前の年、人身御供を入れて運び込まれただろう長持があり、そのそばに血のついた娘の着物の袖が、朽ち果てて落ちていました。
「ここの神は娘を取って喰らうというのか・・・」

行念はお堂の縁の下に潜り泣き祭で何が行われるかを見届ける事にしました。
どのくらい時間がたったのか辺りはすっかり暗くなってきました。

村の方から長持を担いだ行列がお堂に入ってきます。
「痛ましや・・・あの家の娘か」
行念はつぶやきます

行列は直ぐに立ち去りましたが老夫婦の泣き声はしばらく聞こえてきました。

しばらくするとどこからか獣臭く生暖かい風が吹いてきたかと思うと次から次へと黒い塊が飛んできました。
その黒い物の中には赤い目が二つ、大きく輝いていました。
sippei01

「恐ろしや・・・恐ろしや・・・しっぺい太郎が恐ろしい・・・ここに太郎はおるまいな?」
人とは思えぬ声が辺りに響き渡ります。
「今宵もしっぺい太郎はおりはせん」

そして長持を乱暴に叩くと、その回りで踊りはじめました。
「あのことこのこと聞かせんな
しっぺい太郎に聞かせんな

近江の国の長浜の
しっぺい太郎に聞かせんな
すってんすってんすってんてん」

「神などではない・・・化物が謀り娘を毎年食らっておるのではないか!」
長持が開けられると娘は悲鳴を上げました。

その後、地獄のような光景を行念はただただ見つめる事しかできませんでした。
黒い塊がさると行念はお堂から出ました。

残された大きな足跡は行念の足の二倍はありました。
行念は村に戻り見たこと聞いたことを村人に話しました。

一通り話し終えると行念は来年再び戻ると言い残して近江へと旅立ちました。

■次のお話
しっぺい太郎(猿神退治)


「しっぺい太郎(泣き祭)」登場人物

<行念>
元々は腕の良い武士でだったが仕えていた家が戦に敗れてしまい、主人や仲間たちを弔うために雲水(旅の僧)となった

お話の評価

ページトップ