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日本神話

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ひともっこ山「近江民話」

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むかし、むかし、そのまたむかし。
太陽の神様は、国中の神様を集めて、国造りをするよう命じました。

おおぜいの神様たちが、話し合いを始めました。
「せっかく、みんなが集まったのだ。ここはひとつ、一番高い山と、一番大きな湖をつくろうじゃないか」
と、ある神様が言い出しました。
「そうだ、それはいいことだ」
他の神様も、みんな賛成しました。
「さて、どこにつくったものか」
神様たちはわいわい、がやがや話し合いましたが、なかなかいい所が決まりません。
その時、水の神様が提案しました。
「近江の国(滋賀県)の真ん中に、湖をつくることにしてはどうだろう」
それを聞いた山の神様は言いました。
「では、その土を運んで、駿河の国(静岡県)に山をつくりましょう」
こうして、ようやく話がまとまりました。

ところが、どの神様もみんな、小さな山や、小さな池をつくるのに忙しく、一緒に仕事が出来る日が決まりません。

その上、夕方になったので、太陽の神様は、もうどんどんと、西の空へ向かって歩いて行かれるところでした。

月の神様は考えた末に、
「どうでしょう。これからすぐに取りかかっては」
と、申し出ました。
「私が月の光で照らして差し上げます。そうすれば、太陽の神様が戻ってくるまでには仕上がるでしょう」
「うん、それなら、みんなも都合がつく」
神様たちは早速準備にかかりました。
ひともっこ山

二柱ずつが一組になって、土の神様から、荷ない棒ともっこ(縄や竹・蔓を編んで作った土砂の運搬道具)を受け取ります。
太陽の神様が姿を隠してしまうと、月の神様が高い空の上から、さあーっと近江の国と駿河の国の間を、明るく照らしてくれました。
「かかれっ!」
この合図で神様たちは一斉に動き始めました。
近江の土を、もっこにのせ、荷ない棒で担って、せっせ、せっせと、駿河の国へ運びます。

「エッサ、エッサ、エッサッサ」
「エッサ、エッサ、エッサッサ」

その早いこと、早いこと。流石は神様たちです。
みるみる内に、駿河の山は高くなっていきました。一方、近江の国にも、ぽっかりと大きな穴があきました。

さあ、あとひともっこだけ運べば、一番高い山と、一番大きな湖が出来上がる、という時です。
東の空から太陽の神様が顔を覗かせました。
「やめえ!」
それに月の神様は大慌て。急いで中止の号令を出すと、西の山に引っ込んでしまいました。
ちょうどその時、おしまいのもっこを担ぎ出そうとしていた一組の神様たちは、びっくり仰天し、ドスーンと、尻餅をついてしまいました。
そして、最後のひともっこ分の土は、そのままそこにひっくり返って、ひともっこ分だけを残して工事は終わってしまい、その土は小さな山になりました。
それが、長浜の南にある田村山となったのでした。

おかげで、日本で一番高い富士山のてっぺんは、ひともっこ分だけが足らずに、平らになってしまったんですとさ。


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