» みちびき地蔵「宮城県民話」

近代の物語

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みちびき地蔵「宮城県民話」

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むかし、宮城県の気仙沼市大島にハマキチという名の少年と母親が、端午の節句(5月5日)の前日に畑仕事を終えて帰宅途中の事でした。
夕方、辺は薄暗くなりハマキチは疲れはてて今にも眠りそうな顔をしています。

親子は、小さなお堂の前を通りかかりますと何やら人の気配がします。そこには、若い男の亡者がお堂の中のお地蔵様にお祈りをしています。
このお堂のお地蔵様は、みちびき地蔵様と呼ばれており、亡くなる前日に死者の魂が亡者となって極楽浄土に導いて頂けるように挨拶に来ると伝えられています。

母親は、まだこれから多くの未来を背負った若者が次の日に亡くなってしまうかと考えると不憫になりました。若者はお祈りを済ませると天高くに上りふわりと消えました。

母親は、天へ登った亡者を見て「ああ、無事に極楽へと旅立たれた」と感じました。そうしているとまたすぐに違う亡者がお地蔵様にお祈りを始めます。
赤ん坊、若い女性や近所のお婆さん、牛や馬までお地蔵様に祈りを捧げ天へ高く高くと登って行くのです。
みちびき地蔵
ハマキチは「みんな何をしているの?」と母親に尋ねますが母親は何も答えることが出来ずに恐ろしく思いその場から逃げるようにして立ち去りました。
家に帰り夕餉の折に母親は夫にその事を知らせました。しかし、「そんな事があるか。狐にでも化かされたのだろう」ととりあってもらえません。

翌日、浜辺の潮が引き、ハマキチが潮干狩りに行きたいとせがむものですから家族で潮干狩りに出かけました。既に浜辺には村人が大勢出てきておりこんなに潮が引いたのは何十年ぶりだろうかと村の老人たちは話しをしています。

やがて、辺が薄暗くなり満潮の時間になっても潮は満ちて来ませんでした。村人たちはこれはおかしいと話をしていると突然、海の向こうから山ように高く黒い波が浜へ襲いかかって来ました。

「津波だ!」村人たちは一斉に逃げ出しました。波は残酷にも多くの人や動物達を飲み込みました。家族や村人を守り波に飲み込まれる人、逃げ道を失ってしまう人、子供を庇い潮にのまれる人・・・。多くの悲鳴は次々と轟音とともに波にのまれて行きました。

ハマキチ親子も必死で逃げました。父や母は、ハマキチをかばいながら裏山に上り命からがら逃げ延びました。母親は、昨日見た亡者たちは津波にさらわれた人たちだった事に気が付きます。
みちびき地蔵
この津波で村人61人、家畜6頭が死んでしまいました。その後、天に登った亡者を導かれたお地蔵様にみちびかれるように村はハマキチたちの手によって復興されていくのです。


「みちびき地蔵」登場人物

<みちびき地蔵>
亡くなる前日に死者の魂が亡者となって極楽浄土に導いて頂けるように挨拶に来ると伝えられるお地蔵様
<ハマキチ>
宮城県の気仙沼市大島に父と母と一緒に暮らす少年

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