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古代の物語

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両面宿儺(りょうめんすくな)

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仁徳天皇の御代、飛騨国・出羽ヶ平の山が轟音を立て崩れ、その岩壁に洞穴が顕になった。
その中から、身丈は3メートルはあるだろうか、一体両面にして四手両脚、甲冑を身にまとい、腰には杖を帯び、二手には斧、一方の二手で印を結んだ異人が現れたのだ。
その者の名を、宿儺(すくな)という。
宿儺はその四本の腕を巧みに使い、一度に二張りの弓を射ることができ、またその足駿足にして、駆けることは馬よりも速かった。
両面宿儺(りょうめんすくな)

宿儺は武勇にすぐれ、高沢山(現・暁堂寺)の毒龍を平らげ、また飛騨の位山に七儺(しちな)という鬼神が里の人々を苦しめていたときには、天皇の命でこれを見事討ち取った。
水無神社には、討ち取った七儺の頭髪が、神宝として伝わるという。

さらには、下之保の民を苦しめていた荒ぶる竜神を退治し、竜神が棲んでいた山に祠を立てて祀った。これが日龍峰寺のおこりという。
また日龍峰寺の伝えでは、境内にある千本桧は宿儺が置いた杖が生い茂ったものだという。

宿儺は美濃・飛騨の民人のために尽くし、やがて飛騨国で権勢を振るうようになった。

しかし宿儺自身もまた、天皇の命によって討伐されることとなる。
飛騨の国造(くにのみやつこ)が、宿儺討伐を朝廷に願い出て、天皇はこれを聞き入れた。
そして和珥臣(わにのおみ)の祖・武振熊(たけふるくま)に、宿儺討伐の命をくだし、飛騨国へと軍を進めた。
これを知った宿儺は戦禍を避け、村から発つと民に決意を告げたところ、別れが惜しんだ民は宴を催し、宿儺をもてなした。
宴では鍋がふるまわれたが、宿儺は民に難が及ばぬよう気遣い、軒からはずれた石を膳にして、これを食べた。
その石は石膳として、善久寺に伝わる。

そして宿儺は民と別れを告げ、村を飛び去った。
その道中、金山で杖を休め、37日間大陀羅尼を唱え、国家安全・五穀豊穣を祈願した後、高沢山へと向かった。

手下を率いて高沢山に陣をおいた宿儺は、皇軍とそれは見事な戦ぶりを見せた。
しかし、さすがに戦上手の武振熊。陣の弱いところを見極め、一斉に攻めたてたので、宿儺の手下は散り散りになり、宿儺も撤退を余儀なくされた。宿儺は自らの根城としていた出羽ヶ平で再起を図ったのである。
あとを追う皇軍であったが、山に不慣れな兵であったため、とうとう中津原のあたりで宿儺を見失った。
この上は八幡神に頼むしかないと、武振熊はこの地に祠を立て、八幡神に祈願した。
すると祠から一羽の鳩が舞い上がり、北の方、山のかさなる彼方へと飛び去っていった。
「あれこそ八幡さまの御使に違いない。北へ進めと教えてくださったのだ。」
武振熊は皆を励まし、北を目指した。
このとき立てた祠が、今の下原八幡神社である。

峰をこえ、谷をこえ、皇軍は宿儺の根城である出羽ヶ平の麓についた。

立ちふさがる険しい岩山の中腹に、宿儺の岩屋があった。
岩屋の前の広場には、宿儺の手下たちが岩や大木を寄せ集め、宿儺自身はその陣頭に立ち、四つの腕で弓を構え、四つの眼をギラギラ光らせ、皇軍を待ち構えていた。
両軍はしばらく睨みあったまま、ぴたりとも動かなかった。
しかし突然、「ワーッ」という掛け声とともに、皇軍が一斉に岩山を登り始めた。
宿儺が合図すると、手下たちは岩や大木を次々と投げ、皇軍の兵たちは岩壁から転げ落ちていった。
これでは危ないと、地に這いつくばったり、物陰に隠れる兵がいると、すかさず宿儺は矢継ぎ早にこれを撃ち落とした。
さらには時折、雄叫びをあげて戦陣を駆け回り、手下たちを激励した。その様は、大地を轟かし、風を起こすばかりに凄まじかった。
その様子を見つめていた武振熊は、戦局が悪いことを悟り、いよいよじっとしていられなくった。
この上は自ら戦陣に立ち、宿儺と一騎打ちして、討ち取るほかはない。
武振熊は身を隠しながら、素早く岩山を駆け上がり、岩屋の広場に躍り出ると、剣を振るい、まっすぐ宿儺に襲いかかった。
すかさず宿儺も身をひるがえし、武振熊の剣を受け止めた。
剣がぶつかる鋭い音が、広場一面に響きわたった。
とっさの出来事に、宿儺の手下も、皇軍の兵たちも、ぴたりと手を止め、ただ呆然と見守るだけであった。
両者の剣は激しく火花を散らし、なかなか勝負がつかなかった。
しかし、そのうちに、どこにすきを見つけたのか、武振熊の剣が、宿儺の硬い胸を貫いた。
さすがの宿儺も、どうと大地に崩れ落ち、やがて息絶えた。

こうして、宿儺はまつろわぬ者として、武振熊に討ち取られた。
しかし、飛騨の開拓者としての伝承は今に伝わり、敬う人は後を絶たない。

丹生川村に、宿儺が開山したという千光寺がある。
後世、円空という名の僧がこの寺に滞在し、宿儺の像を彫った。
その像は今も当寺に伝わる。


「両面宿儺」登場人物

<両面宿儺>
飛騨・出羽ヶ平の岩屋に住む異人。
一つの胴体に、二つの顔、四つの腕を持つ。
飛騨の民を困らせていた悪鬼や竜神を平らげ、平和をもたらした飛騨の開拓者。
仁徳天皇の命で、武振熊に討ち取られる。

<仁徳天皇>
第16代天皇。民思いの政をし、古来より「聖帝」と呼ばれる。
飛騨国造の願いを聞き入れ、宿儺征伐を命じる。

<武振熊>
和珥臣(わにのおみ)の祖。朝廷の将軍。
過去には神功皇后に仕え、忍熊王の反乱を鎮圧した経験を持つ。

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