» 大国主の国作り-神語り-「古事記 -712年献上 作者:太安万侶 -」

古事記

古事記

古事記は存在する日本最古の歴史書。
上巻は日本神話、中巻は神武天皇から
応神天皇までの記事、下巻は仁徳天皇
から推古天皇までの記事が収られます。

大国主の国作り-神語り-「古事記 -712年献上 作者:太安万侶 -」

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八千矛神(ヤチホコ)が、国果ての高志国の沼河比賣(ヌナカハヒメ)を娶ろうと思って御出でになったとき、比賣の家の前に到ってこう詠った。
※八千矛神<数多の矛を持つ神>……大国主神の別名

八千矛の神の命 思わしい妻を国中探し
遠く遠く 高志国に
賢しい女がいると聞き 麗しい女がいると聞き
妻問い常に出掛け 妻問い常に通い

太刀の緒もいまだ解かず 襲さえもいまだ脱がず
おとめの寝ている家の戸を
我立てば 幾度も揺すぶり
我立てば 幾度も引いて

青山に 鵺は鳴き
野原に 雉は響み
庭では 鶏が騒ぐ

嘆かわしくも鳴く鳥を
嗚呼 打ち殺してくれ
天をも馳せる使いの者よ

神語り

――沼河比賣、戸開かず内より詠うは

八千矛の神の命
わたくしはなよなよとした草のような女で
わたくしの心は浦州の水鳥のよう

今は私の鳥なれど 後にはあなたの鳥になろう
命だけは殺しませぬな 天をも馳せる使いの者よ

青山に陽が隠れれば ぬばたまの 黒き夜になり
やがては朝陽の笑み 栄え来て
わたくしの 綱のような白き腕 淡雪のような若き胸
あなたさま そっと抱き 撫で愛しみ
玉のような手 強かな手 さし巻いて
いついつまでも 共寝して
恋しがる想い 今しばらくは 八千矛の神の命

そうして、二柱の神はその夜は会わずに、来る日の夜に夫婦の契りを結ばれたということです。

一方で、大国主神の正妻、須勢理毘賣(スセリビメ)はたいそう嫉妬いたしました。
その夫の神わびて、出雲国より倭国に上ろうと身支度するときに、片方の御手は徒馬の鞍に掛け、片方の御足は鐙に踏み入れて詠うには――

ぬばたまの 黒き衣を まさに着て
水鳥が羽つくろうように 袖 はたたげば
これは似合わぬ 後ろの波間 ぽいと捨て

翡翠(かわせみ)の 青き衣を まさに着て
水鳥が羽つくろうように 袖 はたたげば
これは似合わぬ 後ろの波間 ぽいと捨て

山畑に蒔いた茜 臼で搗く
茜色 染めし衣を まさに着て
水鳥が羽つくろうように 袖 はたたげば
これよろし

愛しい わたしの須勢理毘賣
群れ鳥のよう 皆と一緒に行ったなら
引かれ鳥のよう 皆に引かれて行ったなら
あなたは泣かないというけれど
山辺の一本薄 頸をうなだれ あなたは泣く
朝雨の霧のように ため息が出るだろう
若くしなやかな 妻の命よ

――須勢理毘賣、大御酒杯を取り、立ち依り捧げて詠うには

八千矛の神の命 わたくしの大国主さま
あなたさまこそは男の中の男
うち見る島の崎々 かき見る磯の崎の隅々すべてに妻がいらっしゃる

でもわたくしはね 女であるから
あなたをおいて男は知らず
あなたをおいて夫は考えられないのです

綾織りのあでやかな壁代 ふわりとする下で
苧のしとね 柔らかな下で
梶のしとね ざわざわと鳴る下で

わたくしの 淡雪のような若い胸を 綱のように白い腕を
そっと抱き 撫で愛しみ
玉のような手 強かな手 絡ませあって
百長に おやすみなさいませ
さあ 豊神酒 召し上がりませ

このように詠い合い、酒杯を交わして心の変わらないことを結び固め微酔して、互いの項に腕を絡ませ合って、今に至るまで鎮まりなさっている。
これらの歌物語を神語りと言って、今に至るまで語り継がれているのであります。

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