» 安倍晴明蔵人少将を封ずる事「宇治拾遺物語」

古代の物語

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平安時代の雅なお話から魑魅魍魎が
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多く紹介しております

安倍晴明蔵人少将を封ずる事「宇治拾遺物語」

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昔々、まだ世の中に鬼やまやかしが溢れていた平安時代のお話です。
当時、神業と言われるほどに優れた陰陽道を使う安倍晴明という男がおりました。

落葉樹が裸になり始めるころ、安倍晴明は内裏の警護に当たる近衛府の詰め所に立ち寄りました。

ちょうどその時、牛車の先駆けも華やかな殿上人が現れます。
見ると、蔵人の少将というまだ若く華やかで見目麗しい御方が牛車から降りて中に入られる所でした。

するとその少将の上に飛んでいたカラスが糞を落として少将に命中させました。

それを見ていた晴明は直ぐに気がつきました。
「あの若く可憐なで世の流行にも合う御方、さては式神に狙われましたね。あのカラスは式神だ。」

こうなるのも生前からの縁。
そうは知りつつも気の毒に思った晴明は少将に近づき話しかけました。

「御門の元へ参られれるのですか?差し出がましいようですが、なぜ参られるのでしょうか?」

晴明は続けて言います。
「貴方は今夜を越すことがないとお見受けしました。私にはそのように見えるのです。証拠をお見せします。参りましょう」
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そう言うと晴明は、少将が乗ってきた牛車に乗り込みました。

少将は両足を震わせながら
「なんとあさましい事だ。もしそれが本当ならどうぞお助け下さい。」
と言い、一行は少将の里へと向かいました。
晴明と少将が出会ったのが申の刻(15時~17時頃)だったため、このように退出したりする間に日は暮れてしまいます。

到着すると、晴明は麗しい少将をギュッと抱きしめ身固めの祈祷をほどこしました。
また、何やらぶつぶつと唱え一睡もせず、声を絶やすこと無く少将に読み聞かせ加持を行います。

秋の夜長に念入りに加持祈祷を行っていると、暁方にコツコツ戸を叩く者が現れました。
「あれへ人をやって話を聞かせなさい」
晴明はそう言って人を遣わしました。

話を聞いてみると、こんなことがわかりました。
少将には相婿(妻の姉妹の夫)に蔵人の五位の者がおり、少将と同じ屋敷に住んでいました。
しかしこの家では、少将をよい婿だと可愛がって世話をし、もう一方の婿である五位の者をことのほか見くびっていたのです。

そのことを恨んだ五位の者は、陰陽師を味方につけて式神を放ちました。
それ故、死ぬはずであった少将を晴明が見つけて一晩中祈っていると、式神を放った陰陽師の元から人がやって来たのです。

その人は大声をあげて言います。
「一時の心の迷いに赴くまま、理由もなく後ろ盾の強い方の仰せのままに式神を放ちましたが既に式神は我が元に戻り、今まさに自分の放った式神に殺されようとしています。してはならぬことをして・・・」

それを聞いた晴明は少将に言います。
「それ、お聞きなさい。昨夜、私と出会っていなければ貴方がああなっていた事でしょう。」

すぐに使いをやって話を聞くと陰陽師のむくろが転がっていたということでした。
五位の者は程なく屋敷を追われたということです。

少将は涙を流して喜び
「どのような礼をしても足りませぬ」
と感謝しました。

その後、名前はわかりませんが少将だった若者は大納言まで出世したということです。


「安倍晴明蔵人少将を封ずる事」登場人物

<安倍晴明>
平安時代の陰陽師。陰陽道に関して卓越した知識を持ち貴族達から絶大な信頼を得ていた
<少将>
綺羅びやかな出で立ちの若者

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