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近代の物語

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座敷童子「遠野物語」

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昔から、古くて大きな屋敷には『座敷童子(ざしきわらし)』と言う神が住んでいると言われている。

座敷や蔵などに住み、たわいない悪戯を働いて家の者を驚かせたりするが、座敷童子の住む家は富に恵まれ大きくなり、その姿を見た者には幸運が訪れると言う。
また、座敷童子の去った家には災厄が訪れると言われており、それはそれは大切にされているのである。

その姿は赤い面に髪を垂らした小さな童子であると言われるが、女童の姿をしている者もいる。
例えば、土淵村の山口と言う所にある山口孫左衛門と言う男の家にも女の座敷童子が2人ほど住んでいると言われていて、噂の通り古くから栄えた、とても大きな家であった。

ある時のことである。
町へ使いに出ていた男が帰り道、村境の橋の向こうから女童が2人、手をつないで歩いてくるのを見た。
「この辺りでは見たことのない娘だなぁ」と不思議に思い声をかけてみると、ぴたりと歩みを止めてこちらを見つめてくる。
「お前たち、どこの子だ?見慣れないけど、何処から来たんだ」
「山口の孫左衛門の所から来た」
「孫左衛門の所から?……それで、これから何処に行くんだ?」
「何処其処の村の、某という者の家に行く」
そう言うと、2人の女童は手をつないだまま、橋を渡って村を出て行ってしまった。
座敷童子

それを黙って見送った男は重いため息をつくと、
「あぁ……あれほど栄えた孫左衛門の家も、もう長くは持たないのだろうなぁ」
と独りごち、世の無常を思ったのだった。

それからしばらく後のこと、孫左衛門の家の庭に生えている梨の木に、見慣れない姿の茸が沢山生えてきた。
それを見つけた若い男衆が食ってみるかどうか言い合っていた所を孫左衛門が通りかかり、
「そのような得体の知れぬもの、決して手を出してはならん」
と制したのだが、下男のひとりが
「へぇ、しかし、どのような茸でも水を張った桶の中に浸して苧殻(おがら)でよくかき混ぜれば、当たることなどありゃしません」
と言うので、皆これを信じて、昼飯にして食べてしまった。
その茸が原因で、孫左衛門をはじめとする主従20人あまりは苦しみにのたうち回り、その日のうちに全員が死に絶えてしまったそうだ。
ただ独り、7歳になる女童だけは昼食を忘れて外で遊んでいた為にこの難を逃れたのだが、その女童も年を経て、子どものないまま病にかかり身まかってしまったそうだ。

孫左衛門が亡くなり家主の不在となった家には、見たこともないような遠い親戚の者までが押し寄せて「孫左衛門には生前あれを貰うと約束していた」とか、「それを貸していたので返してもらいにきた」とか、あることないことを言って一切合切の家財を持っていってしまい、あれほど富み栄えていた孫左衛門の家も、いくらもしないうちに跡形もなくなってしまったのだった。

——この一連の凶事には、実はこのような前兆があったそうである。
牛馬に与える為に干しておいたマグサの下から大きな蛇が現れたのだが、これを孫左衛門が止めるのも聞かずに家の若い衆が殺してしまった。するとその跡から沢山の蛇が湧いて出て、それも若い男たちは面白がってことごとく打ち殺してしまったのだと言う。
仕方がないので屋敷の外に埋めて蛇塚を作ったそうだが、その骸は竹で編んだカゴを何杯も満たす程の量であったそうだ。


「座敷童子」登場人物

<座敷童子(ざしきわらし)>
主に岩手県などの東北地方に伝わる神。この神の住む家は富み栄えるが、去った家はたちまち貧しくなってしまう。
<山口孫左衛門(やまぐちまござえもん)>
土淵村で一番の長者。孫左衛門の家には座敷童子が住んでいると言う噂がある。

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