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中世の物語

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猿神退治「早太郎伝説」

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「信州信濃の光前寺・・・あの事ばかりは知らせるな」
一実坊弁存という旅の僧侶が遠州見付村(静岡県磐田市)を通りかかりました。紅葉が色づく中で太鼓やお囃子が聞こえて来ます。
今日は村にある見附天神社という神社で村祭りが催されていました。しかし、村人の表情は何処か暗く何処か影を落とした印象がありました。
一実坊は、その異様な雰囲気の村を歩いて周るとすすり上げるている家族に出会います。

一実坊は、家族に尋ねました「なぜ、そのような悲しい顔されているのですか?私でよければお話を聞かせて下さい。何かお役に立てるかもしれません。」
すると父親が答えました「この村では年に一度、泣き祭りといってこの時期に若い娘が住む家に白羽の矢が立ちます。その家の娘を人身御供にささげなければ村の田畑は荒れ果て凶作となるのです。今年の白羽の矢は私達家族の門戸に…」父親が話し終えると母親は娘にすがり泣き崩れました。

一実坊は珍しく感情を表にだして「神がそのような悪行を働くものか」申しますとその正体を見定める為に神社の縁の下に潜みました。
すると白木の棺を担いだ村人達が来ました。先ほどの親子は棺にすがり泣いています。村人が皆立ち去ると棺の中から若い娘の泣き声が聞こえてきます。
まもなく、黒い影が奇妙な歌を歌いながら棺に近づきます。

「今宵今晩この事は・・・信州信濃の光前寺・・・早太郎には知らせるな・・・」

その直後、悲痛な叫びが響き渡りました。
一実坊はすぐさま信州信濃の早太郎を探す旅に出ました。
しかし、信濃国は広い。早太郎という男に会う事のないまま悪戯に時が過ぎ夏の終わりになりました。

いつものように早太郎の事を尋ね歩いていると一人の男が「男はしらねえけど早太郎という強い犬なら光前寺にいたな」
一実坊は犬?と半信半疑のまま光前寺を尋ねました。寺の住職に早太郎の事を尋ねると住職は答えました。「確かにうちに早太郎という犬はいる。しかし、普通の犬ではないのです。」
住職は続けて申します「どういうことか山犬がこの寺の縁の下に子を五匹生みましてね。その子が可愛くて山犬に一匹置いていくように頼むと山犬はこの早太郎を置いていったのです。」

一実坊は、住職に泣き祭りの話をして早太郎を借り受けたいと願い出ました。
住職は「困っている村人の役に立つのならば、早太郎をおかししましょう」と承諾しました。

急いで見付村に戻る道中に早太郎にも泣き祭りの事を話しました。
早太郎は不思議と何もかもわかったように颯爽と村を目指しました。

村につくとちょうど、泣き祭りの日でした。
一実坊は、娘の代わりに早太郎を棺に入れるように村人話しいつものように早太郎の入った棺を奉納します。
一実坊は、昨年と同じように隠れてその様子を見守ります。

すると、あの不気味な歌が聞こえてきます。
「今宵今晩この事は・・・信州信濃の光前寺・・・早太郎には知らせるな・・・ 今宵今晩この事は・・・信州信濃の光前寺・・・早太郎には知らせるな・・・」

黒い影が棺を開けたその時、早太郎は黒い影めがけて喰らいつきます。
「早太郎だ!」
猿神退治
早太郎の咆哮と影の雄叫びが響きわたります。
夜が明けて一実坊が戦いの結末を見届けにいくと血に染まった巨大な猿の骸が転がっていました。

この巨大な猿は狒々(ヒヒ)という猿の化物でした。
この狒々が神と偽り村人を騙し、苦しめたのです。

皆が早太郎の姿を探しましたが誰もその姿を見つけることが出来ませんでした。

同じ時、光前寺の住職は矢も楯もたまらず寺の山門の前に立っていました。
すると早太郎がよろよろと寺に近づいてきています。

寺につくと遠吠えをあげてました。住職は早太郎を抱きすくめると息絶えてしまいました。全身に深手を負いながら、最後に住職に会いたかったのでしょう。
和尚は早太郎を光前寺の境内に手厚く葬りました。


「猿神退治」登場人物

<一実坊弁存>
旅の僧侶。遠州見付村の「泣き祭」の事を知り早太郎を探す旅にでる。
<早太郎>
信州信濃の光前寺で飼われているとても強い山犬

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