皇子様の即席子房
文章担当のくさぶきです。
タイムリーなので、今週更新された話の解説をば。
藤下談謀〜詐唱表文『多武峯縁起絵巻(上巻・5)』
多武峯縁起には、藤原鎌足の伝記や談山神社の由来が書かれています。
ググると奈良女子大学のHPに原本の資料がありますので、ご覧になってみてください。
この回のハイライトは乙巳の変の計画を語り合うシーンです。
二人が話をした場所は談山(大化改新相談所)と呼ばれています。行列ができそうな名前ですな。
>皇子は大いに喜んで
>「あなたは私の子房だ。もし私が天位に就くことができたなら、
>あなたの姓を藤原と改めよう」と言った。
今回はこの子房の話をしましょう。
子房は理科の時間に習ったやつではなく、張良のことです。三国志に出てきます。高祖(劉邦)を補佐し建国の創業をささえた名宰相といわれています。ちなみに蹴鞠会で沓を拾うエピソードの元ネタになった人です。
中大兄皇子が三国志オタクだったのかは定かではありませんが、偉大な先輩の名前を出した上で、中大兄と鎌足ゎズッ友だょ 俺たちいい主従になれそうだな! と言っているわけです。
二人の親密さと共に、中大兄の教養が窺い知れるシーンです。
このフレーズはけっこうお気に入りだったらしく、『藤氏家伝』では天智天皇(中大兄)が、こんな感じで鎌足公の死を嘆いています。
>文王、尚父を任じ、漢祖、張良を得るも、豈(あに)朕二人に如(し)かんや
意訳すると、かの有名な先輩たちの絆にも自分たちは負けてない、って感じです。先輩の名前増えてる。ちなみに多武峯縁起では省かれています。
本編の展開とは直接関係ない部分でも、掘り下げると作品の理解が深まって面白いですよという話でした。
和製高祖&張良として、中大兄&鎌足主従の名が挙がってもおかしくないと思うのですが、不勉強故にまだ出会ったことがありません。見つけた人がいたら教えて下さい。ではでは