» 羅生門の鬼「京都府民話」

古代の物語

古代の物語

平安時代の雅なお話から魑魅魍魎が
出てくるお話までご紹介。
陰陽師安倍晴明が活躍するお話も
多く紹介しております

羅生門の鬼「京都府民話」

  • 登場人物
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
5/5 (1)

平安時代中期のまだ魑魅魍魎が都に現れていた時代のお話です。
大江山に、酒呑童子という山を動かすほどの怪力を持ち、空を稲妻のように翔け、多くの鬼神を従え狼藉の限りを尽くしている鬼の大将がおりました。

そこで源頼光と頼光四天王(渡辺綱、卜部季武、碓井貞光、坂田金時)は、山伏に扮して鬼どもを退治しついには大将の酒呑童子を成敗しました。

しかしこの時、茨木童子という鬼を取り逃がしてしまったのです・・・
兎にも角にも酒呑童子を退治した源頼光一行は都に戻りました。

それから幾日か経った夜、源頼光は平井保昌と頼光四天王を集めて宴会を開いておりました。
春の雨のしとしと降る中で6人は酒を酌み交わし、話に花を咲かせます。

平井保昌がふっと
「近頃、羅生門に鬼が出るようだぞ」と言いました。
それを聞いた碓井貞光も
「私も噂を聞いた。酒呑童子を征伐した時に取り逃がした鬼のこともあり気にかかっておったのだ。」

卜部季武、坂田金時はうなずきましたが、四天王の中で最も若い渡辺綱は鼻で笑いながら言いました。
「そうそう鬼なんて出てたまるか!それに大江山で取り逃がした鬼も我々に怯え都には近づけんだろう」

碓井貞光は眼光鋭く渡辺綱に言いました。
「では、鬼が出たらどうするのだ?」
渡辺綱は言います。
「私が退治してみせよう!」

それを聞いた坂田金時は言いました。
「ならば、今直ぐ羅生門に行き確かめて来い。鬼が出るようなことがあれば退治してみせろ」
平井保昌は笑っていましたが渡辺綱は刀を持ち武具を付けて準備を始めました。

平井保昌はニヤニヤと笑いながら言いました。
「ただ、行くだけではわからんではないか。何か証を立てなければな!いいか。本当に羅生門へいったかどうか、証拠に高札を立ててこい」

渡辺綱は馬に乗り、従者も従えずに1人で羅生門へ向かいました。

しとしとと降り続く雨の中、渡辺綱は高札を立ててしばらくの間鬼を待ちましたが一向に現れません。
「全くつまらぬ」というと渡辺綱は馬に跨がりました。

すると、急に雨風が強くなり木々が揺れ始めました。
羅生門の影に何やら気配を感じた渡辺綱は刀に手をかけます。

しかし、羅生門の影から現れたのはうら若い姫でした。
渡辺綱が、なぜこのような時刻に出歩いているのか?と尋ねると姫は
「私は五条の父のところへ行かなければなりません。けれども、雨はふるわ、道はぬかるわで、困っております。」

渡辺綱は姫の手を取り言いました。
「五条ならば私も戻るところ故、馬でお送りしましょう」

その時です。
姫は女の鬼に姿を変えて言いました。
「あたしは愛宕山の茨木童子。ここで毎夜人をとって喰ろうておるのだ。」
rasyoumononi
鬼は渡辺綱の兜を持って天高く引き上げました。
渡辺綱は刀を抜き放ち腕を斬りつけましたが、逆に兜を奪われ羅生門の屋根に落ちてしまいます。

それでも怯まずに鬼を斬りつけると、鬼の腕が見事に斬り飛ばされました。
鬼は人の声では表せないようなうめき声をあげると黒雲を呼び乗り込みました。

「その腕は7日間預ける。その内に必ず取り戻すから覚えておきな!」
というと鬼は雷鳴と共に消えてしまいました。

鬼の腕を手土産に源頼光の屋敷にもどった渡辺綱はみんなに鬼の腕を見せました。
針金のような太い腕で、針のような毛が一面にはえています。

その後、皆は渡辺綱の武勇を讃えて飲み直しました。

源頼光の屋敷から帰った渡辺綱は、鬼の腕を頑丈な箱に入れ屋敷の門に「ものいみ」という札を出してお経を唱えて過ごしていました。
それから6日経った7日目の夜の事です。渡辺綱邸の門前に一人の老婆が立っていました。

警護の者が事情を聞くと、摂津国から来た渡辺綱のおばだと言うのです。
警護の者は
「それはあいにくでございました。主人はものいみでございまして、今晩一晩立たつまでは、どなたにもお会いになりません。」

老婆悲しい声を出して言いました
「小さい頃に親をと別れた綱を母代わりに育てたのです。その子が今や立派な武士となり鬼を退治するまでになったと聞いて一目会いたいと駆けつけたのです。今晩出会えないとなれば今度はいつ会えるか・・・私も年老いて次はないかもしれませぬ・・・残念なことです。」

すると、渡辺綱が屋敷から出てきて老婆を屋敷の中へ通しました。

老婆は嬉しそうに屋敷に入ると渡辺綱に訪ねました。
「ものいみとはどうしたんだね?」

渡辺綱は羅生門の鬼の話を老婆に聞かせました。
老婆が「立派になって・・・」っというと渡辺綱は少し気持ちが良くなって来ました。

渡辺綱の話が終わると老婆が言いました。
「不思議なこともあるものだねぇ。あの綱がこんな立派な武功を立てるなんてねぇ。私までうれしく思うよ。その鬼の腕を是非見てみたいものだねぇ」

渡辺綱は
「まだ、鬼との約束の日は明けておりませぬ故見せることはできませぬ。」と断りました。

老婆は
「残念なことだねぇ。老い先の短い私に綱の有志を見せて欲しかったのだけど縁が無かったのかねぇ」
と言います。

渡辺綱は老婆のことが不憫に思い、どうしても鬼の腕を見せなければならないような気になってしまいました。
「仕方がございませぬ。少しだけお目にかけましょう」
そういうと鬼の腕が入った箱を開けて老婆に見せました。

老婆は
「まぁまぁこれが鬼の腕かい・・・」
というと鬼の腕を手に取ります。

すると渡辺綱がはっと思う間に、老婆はみるみる鬼に姿を変えて黒雲を呼び寄せました。

「たばかったな!!」
と悔しがる渡辺綱をあざ笑うかのように鬼は言います。

「綱よ、よいか!7日目の夜、この腕、しかと取り戻したぞ!!」
渡辺綱は刀を抜き追いかけましたが既に遅く鬼は空高く消えてしまいました。

その後、都に鬼は現れませんでした。
しかし、摂津国で茨木童子を見たという人がいたそうです。


「羅生門の鬼」登場人物

<源頼光>
初代摂津源氏で藤原道長の側近であり酒呑童子や鬼蜘蛛などを退治した人物
<茨木童子>
酒呑童子の側近の鬼であったが頼光に酒呑童子が倒された後に逃亡していた
<渡辺綱>
頼光四天王の一人。四天王の中で最も若いが筆頭
<碓井貞光>
頼光四天王の一人。四天王の中で最年長
<坂田金時>
頼光四天王の一人。幼少期は金太郎というなで足立山に住んでいた
<卜部季武>
頼光四天王の一人。糸で下げた針をも射ることができる弓の名人

お話の評価

ページトップ