» 美夜受比売「古事記 -712年献上 作者:太安万侶 -」

古事記

古事記

古事記は存在する日本最古の歴史書。
上巻は日本神話、中巻は神武天皇から
応神天皇までの記事、下巻は仁徳天皇
から推古天皇までの記事が収られます。

美夜受比売「古事記 -712年献上 作者:太安万侶 -」

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それから倭健命は吾妻の国から甲斐の国にお出になり、酒折宮(さかおりのみや)にいらっしゃった時、

新治(にいばり) 筑波を過ぎて 幾夜か寝つる
(新治や筑波の地を過ぎてから、幾度の夜を旅寝しただろう)

とお詠いになりました。すると夜警の篝火を焚いていた翁がその御歌に続けて

日日(かが)並べて 夜には九夜 日には十日を
(日々を重ねて夜は九夜、日では十日になります)

と詠いました。そこで倭健命はその翁を褒め、東国造の称号をお与えになりました。

その甲斐の国から信濃の国に越えてすぐに信濃の坂の神を説き伏せて、尾張の国に帰って来られ、先日再会を約束していた美夜受比売(ミヤズヒメ)の所にお入りになりました。
そして倭健命にお食事を差し上げる際、美夜受比売が御杯を捧げて献りました。
この時、美夜受比売の着ている襲(おすい)の裾に月の障りのものがついていました。
倭健命はその月の障りをご覧になって

ひさかたの 天の香具山
鋭喧に さ渡る鵠(くび)
弱細 (ひはぼそ) 撓(たわ)や腕(がひな)を
枕(ま)かむとは 我はすれど
さ寝むとは 我は思へど
汝が著(け)せる 襲の裾に
月立ちにけり

(ひさかたの天の香具山の上を
鋭く喧しく鳴きながら渡る白鳥よ。
その白鳥の頸のようにかよわく細い、しなやかな腕を
枕にしたい、
貴女と共寝をしたいと思うけれど、
貴女が着ている襲の裾に
月が出てしまったよ)

とお詠いになりました。そこで美夜受比売はこの御歌に答えて

高光る 日の御子
やすみしし 我が大君
あらたまの 年が来経れば
あらたまの 月は来経行く
諾(うべ)な諾な 君待ちがたに
我が著せる 襲の裾に
月立たなむよ

(日の神の御子よ、
わが大君よ、
年が過ぎてゆけば、
月も過ぎてゆきます。
いかにも貴方が待ちきれなくて
私の着ている襲の裾に
月が出てしまったのでしょう)

と咏いました。
そして倭健命と美夜受比売は御結婚されました。
倭健命は帯びておられた草那芸剣を、その美夜受比売の元に置いて、伊吹山の神を討ち取るためにお出かけになりました。

そこで倭健命が
「この山の神は素手で直に討ち取ってやろう」
とおっしゃってその山に登られた時、山のほとりで白い猪に会われました。
その猪の大きさと言ったらまるで牛のようでした。
そこで倭健命は
「この白い猪に化けているのは、山の神の使者だろう。今殺さず帰る時にでも殺してやろう」
と口にし、山に登られました。
すると山の神は激しい雹を降らせ、倭健命を打ち惑わせました。
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実はこの白い猪に化けていたのは山の神の使者ではなくその山の神自身であったのに、倭健命がああ仰ったがために神に惑わされてしまったのです。
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倭健命は山から降りて帰って来られ、玉倉部(たまくらべ)の清水にたどり着いてお休みになられていた際に徐々に意識を取り戻されました。
そこでその清水を名付けて居寤清泉(いさめのしみず)というのです。

<<弟橘比賣命の入水 || 倭建命の最期>>


「美夜受比売」登場人物

<倭健命(ヤマトタケルノミコト)>
景行天皇の皇子。父に疎まれ西国や東国の平定を命ぜられる。
<美夜受比売(ミヤズヒメ)>
倭健命の妻。

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