» 里を救った如来さま「岩手県民話」

古代の物語

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里を救った如来さま「岩手県民話」

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むかしむかし、掃部長者(かもんちょうじゃ)という、それはそれはたいそうな長者さまがおりました。
長者さまには欲深い妻がおりまして、彼女は合わせて365人もいる下男下女に、朝早くから夜遅くまで仕事をさせていたのです。
とはいえ、雨が降る日は休ませ、晴れた日には野に出して稼がせるというように働かせていました。
しかし、欲深い妻は、次のようなことを考えます。

「雨の降る日に365人を休ませるなんて、1年間ただ飲み食いして何もせずに過ごすのと同じことだわ」

こうして妻は、傘やケラを作り出し、雨の降る日も彼らを働かせるようになったのです。

そんな欲深い妻に、とんでもない出来事が起こります。

ある日、一人の下女が、井戸に水を汲みに行きました。
すると、水の中に1匹の赤い魚がいるのを発見します。

下女はあまりの物珍しさに、それを捕まえて、味噌をくるんで焼きました。
しかし、あんまり良い香りがするものだから、欲深い妻は奥からそれを嗅ぎ付けて来て、おいしいと言って食べてしまいます。

そして喉が渇いた妻は、下女に水を運ばせます。
しかし、何度運ばせてもどくどくと飲み干してしまうので、ついに下女は運ぶ力が無くなってしまいました。

これでは仕方ない、と妻は独りで井戸に行き、顔を突っ込んで水を飲みました。
その時、井戸の石が崩れ、妻は水の中に落ち、大蛇へと姿を変えてしまいます。
大蛇は上葉場村という村を湖にして住むようになりました。

その後、毎年作物を荒らすものだから、村人たちは順番に娘を一人ずつ、大蛇の生贄に捧げるようになりました。
そしてその年、郡司兵衛の番が回ってきました。
しかし、彼の娘は一人しかいなかったもので、そんな大事な娘を生贄にしたくはありませんでした。
そこで彼は旅支度をして、はるばる遠くまで娘を買いに行くことにしました。

郡司兵衛は、肥前国松浦の貧しい一軒を訪れ、事情を話します。
そこには佐夜姫という娘と、盲目の母が二人で暮らしていました。
佐夜姫は

「私が身代わりとなって、そのお金でお母さんが暮らした方が気楽でしょう」

と母に言い聞かせます。
母は姫に

「この山奥には狸や狐が出てきていたずらをするのです。行ってはいけません」

と言い、姫が行くのを引き止めます。
しかし、郡司兵衛は金を払って姫を連れ帰ってしまいました。
母は涙を流しながらも、どうしようもありませんでした。

そして、佐夜姫が生贄に供えられる時が来ました。
姫はまず尼坂で髪を刈り、化粧坂で化粧しました。

その後、道伯森の頂上に大蛇が来たのを見分け、四つの柱を組み、台を作り、そこに前座しました。
空は曇り、俄かに嵐が起こり、大蛇は赤い舌を開いてやって来ました。

佐夜姫は襟から薬師如来を取り出し、法華経を誦読しました。
すると、大蛇からだんだん力が無くなっていくではありませんか。
里を救った如来さま

佐夜姫は法華経を読み終えると、それを大蛇の角に投げました。
それは見事に当たり、角はぽろりと落ちました。

佐夜姫はそれを角塚に埋め、大蛇の体は大塚に埋めました。
佐夜姫は化粧坂に帰り、
「薬師さまのおかげでした」
と、そこに薬師堂を建てて祈りました。

その後、佐夜姫は肥前国に帰り、自分の家に着きました。
盲目の母は
「お前は娘に化けて来た狸であろう。娘ははるばる北国に行き、今は死んだはずだ!家に入れることはできぬ! 」
と、佐夜姫が家に入るのを拒みました。
そこで姫はことの有り様を解き明かしたということです。

伝説によれば、佐夜姫が落とした大蛇の角を埋めた角塚は、角塚古墳――岩手県奥州市胆沢区南都田にある、日本最北端の前方後円墳を指すということです。


里を救った如来さま「岩手県民話」登場人物

<佐夜姫>
遠く、肥前国松浦から生贄に捧げるために買われてきた娘。

<長者の妻=大蛇>
欲深い、掃部長者(かもんちょうじゃ)の妻。
ある日大蛇の姿へと変わり、毎年作物を荒らすようになる。

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