応神天皇と三兄弟「古事記 -712年献上 作者:太安万侶 -」
応神天皇は多くの御子を儲けたが、その中で日嗣の御子となったのは、大山守命と大雀命、そして宇遅能和紀郎子であった。
ある日、応神天皇は大山守命と大雀命を呼び寄せ、このような質問をした。
「子どもたちのうち、一番可愛いと思うのは年上の子か、それとも年下の子か」
彼が何故このような問いをしたのか。
それは、日嗣の御子のうち歳の一番若い宇遅能和紀郎子を可愛がっており、自身の後継者として立てようと考えていたからである。
そのような彼の思惑に対し、一番年上である大山守命はこう答えた。
「年上の子の方が可愛いと思います」
大雀命はというと、兄とは反対に父の考えを察しこう述べた。
「年上の子は既に成人しているのですから心配はございません。ですが、年下の子はまだ幼い為それだけ可愛らしく思えます」
大雀命の答えに、応神天皇は「正に私の考えと同じだ」と、喜んだ。
こうして、宇遅能和紀郎子が正式な後継者、即ち天津日嗣となった。
そして大山守命は山や海の管轄を、大雀命は天皇の補佐を任されることとなり、大雀命はこの後も父の命に背くような真似はしなかった。
- 挿絵:ササニシキ様(ゲスト)
- 文章:東 春行
「物語のタイトル」登場人物
<応神天皇>
品陀和気命。第十五代天皇。<大山守命>
応神天皇の御子。後に反乱を起こす。<大雀命>
同上。後の第十六代仁徳天皇。<宇遅能和紀郎子>
同上。一番年の若い日嗣の御子でありながら、父に寵愛され後継者とされた。