溶けてしまった雪ん子「青森県民話」
むかしむかし、ある雪国に、おじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんとおばあさんには子どもがいなかったので、二人で暮らしていました。
そんなある冬のことです。
吹雪の夜でした。おもてのほうでオギャーオギャーと赤ん坊の泣く声がするのです。
「あれまぁ、赤ん坊の声がするよ。こんな吹雪の晩に誰だい」
おじいさんとおばあさんが戸を開けてみると、吹雪の中に、真っ白な着物を着た美しい女が赤ん坊を抱いて立っていたのです。
「こんな吹雪の中でどうしたんだい。さぁ、早くうちにお入り」
おじいさんが言うと、女がこういうのです。
「おじいさま、この子を抱いてください」
おじいさんが
「あぁいいとも」
と言っておじいさんがその子を抱くと、その瞬間吹雪が強くなり、女はスゥっと消えてしまいました。
その赤ん坊は色が白く、とても可愛らしい女の子で、
おじいさんとおばあさんはこの赤ん坊をたいそう可愛がり、雪ん子と名付けて大切に育てました。
時が経つにつれ、赤ん坊はだんだん大きくなり、それはそれは美しい娘になりました。
ところがどういうわけか雪ん子はあついのが大嫌いで、夏になると元気がなくなるのです。
おじいさんやおばあさんが囲炉裏にあたれと言っても、
「寒いところがいいの。あついのはいや」
と言っていやがるのです。
ある日、近所の子どもたちが雪ん子を遊びに誘いました。
あついのが大嫌いな雪ん子を、みんなでからかってやろうというのです。
「もっと火の近くに行けよ」
子どもたちは嫌がる雪ん子をつかんで、たき火のそばへ押しつけました。
「いや、あついあつい」
するとどうでしょう、雪ん子は、溶けて消えてしまったのです。
子どもたちはびっくりしてそちらを見つめましたが、そこには白い湯気が立ちのぼっていただけでした。
「溶けてしまった雪ん子」登場人物
<雪ん子>
吹雪の晩、女が老夫婦に託した赤ん坊。あついのが苦手。
<おじいさんとおばあさん>
子供がいなかったため雪ん子を可愛がる。